ROCKYOUそれから24
しょーちゃんの恋人になれた日からもうすぐ一年が経つ。
オレ達は、はじまりこそ色あったけど。
穏やかにふたりで過ごす時間を大切に日を送っている。
雅紀?今度の週末、ドライブしようか。
朝ごはんの途中で、新聞を読んでいたはずのしょーちゃんが新聞から顔を覗かせた。
仕事が忙しくて土日出勤が続いていたしょーちゃんがようやく休みが取れる週末。
夜はどちらかの部屋で一緒に過ごして、ほぼ毎日会えてるんだから、そんな事よりゆっくり休んで欲しかったけど。
しょーちゃんが嬉しそうだから、オレも嬉しくなる。
ドライブ?どこに行くの?
それはお楽しみ。
しょーちゃんが鼻歌まじりにまた新聞を読み始める。
しょーちゃんと一緒ならオレは何処だって、きっと楽しい。
しょーちゃんも同じだといいなって思いながらトーストにジャムを塗った。
ねえ?しょーちゃん?どこに向かってるの?
ようやく訪れた週末。
運転席のしょーちゃんに行き先を訊ねるけど、着いてからのお楽しみだよって教えてくれない。
とりあえずオレは運転中のしょーちゃんを横目で見てみる。
しょーちゃんはFMラジオから小さく流れる洋楽に合わせて一緒に口ずさんでいる。
オレも一緒にその歌を口ずさんでみる。
さすがに歌い続けるのにも疲れて。
途中であくび連発するしょーちゃんの為に、眠気覚ましのガムの包み紙をむいて口元に持っていくと。
わざとオレの差し出した指ごとぱくりと食べて笑う。
ああこの人が好きだ。
オレはつくづく実感してしまって、心が震えた。
雅紀、着いたよ。
車は住宅街を通って小高い丘にある公園の駐車場に入る。
意外と早く目的地に到着したみたいだった。
しょーちゃん?ここは公園?
そう。公園。
しょーちゃんは先に車から出て伸びをしている。
あともう少しかな。雅紀、こっちこっち。
しょーちゃんは腕時計をちらりと見てから、オレを手招きして公園に入っていく。
オレはこれから何が起こるのか不思議に思いつつ付いていく。
まさきぃ。こっちこっちー。
なんの躊躇もなくジャングルジムに登り始めるしょーちゃんの後を付いてオレも登る。
ジャングルジムのてっぺんまで来た時にオレは息を飲んだ。
小高い丘にあるジャングルジムの上からは緑の多い街並みが一望出来て、空には夕日が沈みかけていた。
ここから見る夕日と夕焼け。綺麗だろ?
うん。すごく、綺麗。まん丸の夕日なんて久しぶりに見たよ。
ここからの夕焼けを雅紀と一緒に見たかったんだ。
夕焼け色に染まるしょーちゃんがオレを見つめて言う。
しょーちゃんの黒目に夕日が映ってるよ。
あはは。雅紀の黒目にも映ってるよ。
お互いの黒目を覗き込んで、瞳に映る夕日を見ているうちに自然と唇は重なり。
しばらくの間、夕焼けに染まりながらオレ達はキスをする。
遠くの方から子どもの笑う声がして、オレ達が我にかえると夕日は随分沈んでいた。
夕日が沈みそうだ。思わずキスに夢中になっちゃったな。
ホントだね。オレ達らしいね。
ジャングルジムのてっぺんで沈みゆく夕日を見ながら、オレの手にしょーちゃんが手が重なる。
なあ、雅紀?俺たち、もう一年経ったんだな。
ふふふ。しょーちゃん、覚えてたの?
もちろん、覚えてるよ。
ふたりの重なる手が恋人繋ぎに変わる。
なあ、雅紀?これからも、ずっと、隣にいてくれる?
うん。しょーちゃんが望んでくれるなら。
もうっそういう言い方は嫌だ。雅紀の気持ちを言ってよ。
うん。オレはしょーちゃんと、ずっと、一緒にいたい。
空はすっかりたそがれて、月が見え始めてきた。
オレ達はジャングルジムの上でまたキスをする。
この時間が永遠に続きますように。
しょーちゃんの隣でまたこの夕焼けを見れますように。
しょーちゃんの唇の温度を感じながら、オレは心の中で何度も祈った。